<慶応尾根から前穂北尾根の縦走>
5月3日(木曜日)天気・はれ
上高地(6:25)で岳沢本隊と分かれ、慶応尾根へ向かう。新村橋(8:00)を渡り奥又白沢を登りだしてすぐ、最初の堰堤の左岸側に赤テープがあり、取り付きと分かる。かすかな踏み跡を辿り急坂を登る。尾根上ではテープもなくなり、忠実に背を辿る。先行者もトレースも無く、腐った雪は踏み抜きやすく、歩行に難渋する。2150?付近では、岩と雪と樹とでルートも判然とせず、ザイルを出して急斜面をトラバースし突破。このままではとても時間が足りない、予定の8峰の頭までは無理かと思っていたが、パノラマコースとの合流点(13:30)から先行パーティーのトレースが出てきてスピードが上がる。このころより降雪はじまる。2450?のコルでテントを張ることにする(15:40)。パノラマコースから来たパーティーが既に設営の準備をしており、8峰稜頂には4~5張りのテントが見える。19時頃就寝。夜半、前線が通過したのか、風と、雪と、雷鳴とで眠りを妨げられる。(行動時間9時間15分)
5月4日(金曜日)天気・はれ
3時起床。簡単に朝食をとり、雪を払い、テントを撤収して出発(5:10)。昨夜の雪でトレースは消えてしまっている。8峰の頭からいよいよ北尾根に入る。7峰の下りは氷結した壁で、ザイルなしでは怖かった。6峰の登りも緊張する。ザイルを出していたパーティーもあったが、時間の節約でフリーで通過。スピードアップ出来たので1日で抜けられたのだと思う。 5・6のコル(8:30)通過。5峰の下りからザイルをだす。4峰は急峻な雪・岩ミックスの緊張するルートだ。3・4のコルで先行3パーティーの登りを見ながら簡単な昼食をとる(12:00)。此処で我々の後から来た、涸沢からの何組かのパーティーは時間切れで下山していった。我々の体力も限界にちかく、足を上げるのさえきつく、すぐに息が上がってしまう。
核心部である3峰では最初の1ピッチ目、取り付き後左に回り込んだスラブ状のトラバースが怖い。2ピッチ目はテラスから右の凹角を詰める。ザイルが滑らず短くビレイをとる。 この後4ピッチ目にも、1手だがバランスの難しいところがあり、手袋を外してやっと越えられた所があった。2峰と3峰との切れ目が分からず時間が心配になってきたとき、目前のピークが前穂の頂上だと分かって大安堵した。2峰の降りは慎重にクライムダウンする。前穂の頂上(3:50)からは、昨日の慶応尾根・今日の北尾根と手に取るように見え、感激を新たにした。
後は奥明神沢を岳沢へと下る。足が重く尻制動で滑り降りる。岳沢本隊に合流したのが17:30。行動時間=実に12時間20分の、チョット時間のかかりすぎたハードな1日だった。