コースタイム 煙樹ヶ浜6:00~室川峠12:00~白馬トンネル上5:30~護摩壇山駐車場2:45
距離 約80km 時間 20時間30分 水消費量 4L
朝6時に煙樹ヶ浜を出発し、田園地帯を抜けて千津川から山道を緩やかに登り始める。九十九折れのパイロット農地のミカン畑の中の道を通り電波塔のある白馬山脈の上へでる。
ここから山道となり樹林帯の中を少し歩くと風力発電の管理道路を歩くことになる。たいして風は吹いてないと思うが風車はビュンビュン回っている。
日高平野を見下ろしながら眺めの良い道を歩くが標高は500mほどになっていると思うが台風の影響か真夏のような暑い太陽が照りつけ水ばかり飲んでいる。
室川峠へ着いたのがちょうど12時なのでここで昼食にする。この時点で水を1L消費し、残りが1.5Lとなってしまった。どこかで補給しないと足りなさそうである。前回80km歩いた時は11月頃だったので水は2Lで足りたので今回2.5Lにしたのだが全然足りないようである。
ここから白馬林道となりしばらく有田方向の景色を見ながら歩くことになる。皆でよく登る生石山が良く見える。しばらく登りが続き心細くなった水を節約しながら飲むが、それにしても暑い。夏の日差しのようである。
たしかシルクロードを旅する隊商は昼間陰で休んで夜に行動するのだったかななどと思いだし、少し休んで涼しくなってから行動したほうが良いのかなどと考え出す。
道は日高側になり日当たりがよくなった。樹林や法面で陰になる部分は良いが日なたへ出るときはちゅうちょする。
高津尾川の上のあたりで土砂崩れ箇所があり通行止めになっている。そこから少し行くと水が少し流れている場所があり空になったボトルに補充する。これで最後まで水の心配はなさそうである。
日が傾いてくると暑さもやわらいで歩きやすくなった。時間は5時頃となり、明るいうちに食事でもしておこうと腰を下ろす。フルーツ入りのゼリーとブドウを少しとパン。汗をかくときはフルーツが一番いいな。もう少し持って来ればよかった。
足はあちこちの関節と右のアキレス腱が痛いがまあ大丈夫。しかし右足裏にマメができたようで少し心配である。今回は舗装を歩くために登山靴ではなくトレランシューズを買ってはいてきたが、新品で慣らしてなかったのが良くなかったのかな。
白馬トンネル上の企業の森のあたりでパラパラと雨が降ってくる。台風のせいか黒い雲が広がってきて先行き不穏な感じである。
少し我慢していたが大粒の雨が降ってきたので急いでカッパを着る。ところがカッパを着ると太陽が出てくる。暑いので、カッパを脱ぐと又雨が降ってくる。
見ると前に虹が。ちょうど見晴らしのいい場所で虹が出たので写真を撮る。
6時頃になると暗くなってきてヘッデンを点灯する。
雨は降ったりやんだりだが面倒なのでカッパは着たままで歩く。結果、暑くて水ばかり飲む。温度は下がっても湿度が高いのか汗をかく。
雨が降っているうえに霧も出てきて視界は10mほどとなり、真っ暗な中のブラックアウト状態である。明るいものはヘッデンの明かりだけで右左は5m先に何があるかもわからない。ヘッデンで道路の白線だけを頼りに歩く。
暗くなって1・2時間は心細いがだんだんと慣れてくる。何でもなれるんだなと、適応力に感心する。
城が森のあたりで60km程だと思うがなかなかたどり着かない。右足のマメはどんどん成長しているようで水疱がつぶれないかひやひやする。そこを保護するように歩いていると今度は左足にもマメができてきたような感じがする。ここが弱点だったとは思わなかった。
夜9時頃、この世に1人だけ状態だったのが、前から突然車が現われる。今頃こんなところを通るなんて一体何者だと思ったが、客観的にみると不審なのはこちらの方らしくスピードを落とさず完全スルーでした。昼間だったらちょっと話しかけてくる人が多いのだが、さすがにこの時間にこの場所はヤバ過ぎるか。それから1時間後にも今度は後ろから車が追い越して行ったがこれも完全スルーでした。後は誰も通らず。
城が森の分岐も過ぎ、残り15km程かと思うが九十九折れの言葉通りに99回ほど似たようなカーブを繰り返したのにエンドレスのように思えてくる。
関節の痛みとアキレス腱とマメに加えて雨と霧と5拍子揃ったかと感心する。
5kmおきに休憩していたのが4・3・2kmとだんだん短くなって行きどんどん遅くなっている。あまり寒くないしカッパを着たまま道端でゴロンと寝ていくかという誘惑も感じるが、それじゃ行き倒れだしなと思いとどまる。
夕方にパンとフルーツを食べてから何も食べていないが、汗をかくので水ばかり飲んで食欲はないがシャリバテなのか足元がややふらつく。
飴ちゃんをしゃぶると少し力が出てきた。
次のカーブを曲がったらスカイラインの道かと何度思ったことか。しかしカーブを曲がると無情にもまた次のカーブが現われる。
城が森のあたりまではビールが飲みたいなとそればかり考えていたが、このあたりでは叶わない夢はあきらめて護摩壇山の駐車場にジュースの自動販売機があったなと思いだす。そう、よく冷えた炭酸系がいいかな、いや、粒粒の入ったミカンジュースか、それとも後味すっきりのアップルジュースか。と、妄想は膨らんでいく。もう考えることはジュースのことばかり、思慮分別のある中高年紳士の考えることかと思うが、ここでは理性より本能のほうが勝っている。
夜中の1時を過ぎたが眠いという感覚はなく足のマメさえなければ朝まで行けるなと思えてくる。夜は景色が見えないので物思いにふけることになるのか。家で座って考えるよりも脳が活性化しているように思う。
明けない夜はないというが、終わらない道はなかったようでついに白馬林道は終わりをつげスカイラインの道が現われる。
もう少し。
雨・風が強くなってきたが、そんなの関係ない、もう少しでジュースが飲めるとルンルン気分で歩く。
しかし、この先2.5キロほどが長かった。
Pの標識がちらっと見えたので着いたかと思ったら違う場所で、さらに坂を上る。
坂を上り切ってカーブを曲がるとついに駐車場が見えた。
それに車が5・6台止まっている。
おお、ここには人間がいる!
自分の車もあった。ロックを開けて小銭を取出し販売機へ向かう。
サイダーとアップルジュースを買った。 こんなうまいものがこの世にあったかと思った。
それと靴を脱いで このような解放感を味わったのも かつてなかった。
2時45分到着だったが、少し寝たら7時前に目が覚めた。
起きてみるとかなり強い雨が降っている。着いたときは小雨程度だったのが本降りになったようだったので、護摩壇山のピークはあきらめて帰路に就く。
椿山ダムのあたりまで前が見えないような土砂降りで道路に土砂が流れ出ている場所もあった。まあ、天候的にも、体力的にも、無事に達成できてやれやれでした。
今回のルートの距離は80km程だったと思うが、20時間30分で歩き通せて念願がかないました。
(今回学んだこと)
2日分を1日で歩くというのは自分の限界を超えると思っていたので、体が耐えられるか、どのような部分がダメになるのかそのあたりを知りたいと思っていた。
急傾斜を上り下りしていないので足の筋肉痛はあまりなかったが関節はあちこちが痛かった。
それと足のマメができるのは鍛えて足裏を強くするのと靴を馴らすことが必要なのかなと思った。
汗が出たからのどが渇いて水を飲んだが、これは体力を消耗させるように感じた。飲む水の量が多いほど消耗するのではないかと思う。
睡眠時間はなくても 24時間行動は問題なく可能だと思う。
今回一番役に立ちそうだと思ったことは、長時間行動するにはいかに体を長持ちさせるかということで、それには無理・無駄な動きをなくし自分に合った適切なペースで歩くかということだった。
( フォレスト 記 )